医療議連に寄せられたご意見

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医療議連に寄せられたご意見

産科を行ううえでの「リスク」を下げるか「ベネフィット」をあげるか・・・(医師・匿名希望)

50歳代後半の産婦人科医師で主として産科を行っておりますので産科について意見を申し上げます。

結論を先に申し上げますと、産科を行ううえでの「リスク」を下げるか「ベネフィット」をあげるかしないと産科医療は数年で壊滅すると思います。

現在急速に産科を行っている医師が急速に急速に減少している理由は、「リスク」は増加するのに、「待遇」「やりがい」などの「ベネフィット」はむしろ減少し、大変割りの悪い仕事になっている点であることはもはや明確です。昨年秋宮城母性衛生学会で桜井充議員のお話を伺う機会がありましたが、その中で「損保の知人が、産婦人科医はベネフィットの割にリスクが極めて高い、よくやっているなと言われた」という内容を話しておられましたが、残念ながらその通りと思います。
「リスク」の最たるものは、2006年2月19日に福島県立大野病院加藤医師が勤務中に逮捕され、しかもこの逮捕の功績に対し担当警察署を表彰した「大野病院事件」があります。公判の記録をみると「医療事故の被害者と思っている遺族」は処罰感情の固まりで、ただただ医師を罪人にするすることに執念を燃やしているように見受けました。この事件の前にも、脳性麻痺で理不尽と思える判決で高額の賠償金を取られる例があり、産科医療を自分は継続するのかについてもやもやした感情を持ちながら診療していたものの、止めるまでには至らなかったように思います。
しかし、この事件以来産科診療に対する意識が根本的に変わったと思います。大野病院で起こったような診療の結果母体死亡となることは、分娩を取り扱っている限り確率は高くないものの起こりうることで、死亡原因は簡単にはわからない方が普通ですので説明しても遺族側には言い訳に聞こえ、納得できないことが普通です。したがってこれは分娩を取り扱っている限り「明日は我が身」のことです。このリスクを確実になくすには分娩をやめることしかありません。大野病院事件前は「妊婦さんが困るから」と踏みとどまっていたものが、あまりのリスクに分娩を止める決断に対するハードルがすっかり低くなったのです。現在厚生労働省より「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案―第三次試案―」が公表されておりますが、刑事手続きは現状のまま残り、大野病院事件のような経過となることを防げるとは思えないので、「リスク」の減少とはならず賛成できません。
待遇については、私を含め大部分の医師は、収入そのものに大きな不満があるわけではありません。ただ分娩を伴う「いわゆる当直業務は」は厚生労働省で示した当直の基準にはあてはまらないので、一晩(16時間)の夜間勤務に対し本来は2日休みがあるはずです。医師数が足りないため休みが無理であればその分は時間外給与として支払うべきですが、現状ではずっと低額の「当直料」でごまかされています。つまり平日昼間の給与+αで365日、24時間働かせているわけで、平日昼間以外の業務が多い診療科ほど理不尽さの度合いが強く崩壊しつつあるわけです。
今いる産科医をやめさせず、願わくば新たに産科医となる人材を得るには、思い切った「リスク」の減少、たとえば分娩に関する医療の刑事免責、民事の上限設定を行うか、待遇の大幅改善しかないのではないでしょうか。医療の利用者である国民が医療費にこれ以上金を使いたくないのであれば「リスク」を減らすしか方法はないように思えます。

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