地方の中小規模入院施設を無くすな!(Sさん・医師)
現在、地域性や科目による医師の偏在などが原因で、ことに地方ではまともな医療が受けられない状態になっている。一方入院施設では療養病床の削減政策などにより、入院が必要な患者さんでも施設から締め出されているのが現状である。
私は宮城県南の柴田郡で20年来小病院を経営してきたが、2年前の医療制度改正により非常に苦しい病院運営を強いられている。即ち看護師数の規制強化による経営圧迫である。2年前の改正で“7対1”看護が導入され、都会の大病院に看護師が集中する結果となった。当時東大病院の関係者が秋田県まで赴き、看護師を勧誘したとして秋田県の基幹病院の院長が激怒していた事を思い出す。改正の主旨は「手厚い看護を目指して」という事であったが、そもそも看護師数が絶対的に不足する中での改正は、弱い立場の病院の存続を脅かす。即ち看護体制最低ランクの“15対1”の病院では、慢性的な看護師不足に陥り規定より不足すれば、「特別入院基本料」という入院料の約4割カットという過酷な罰が待ち受けている。極端に言えば、看護師が一人不足しただけでその病院は倒産してしまうことになる。2年前までは、看護師数が不足すれば看護加算が取れなかっただけなのでこのようにはならなかった。この制度は、看護師不足を逆手に取ったいわば中小病院いじめであり、地方の入院施設の淘汰策である。
なぜ厚労省がこのような強行策を取るかと言うと、平均在院日数を短縮したいためであろうと推察する。事実この4月からの医療費適正化政策の2本柱の一つが平均在院日数の短縮である。そのために様々な理由をつけて療養病床を削減し、地方の中小一般病院をつぶしにかかっているとしか思えない。
地方の中小一般病院の役割は、在宅医療と中核病院の間にあって地方医療の潤滑油的な仕事を担っている。在宅患者さんが急変したときの受け入れや、中核病院で病態が落ち着いた方または進行がん患者さんで在宅での療養不可の方などの受け入れがその役割である。しかも24時間施設対応も可能であり、いわば町の「ほっとステーション」でもある。しかし国はこのようなファジーな施設は廃止し、在宅と大病院のみに特化した医療を目指している。
私の病院も看護師数ぎりぎりでやっており風前の灯状態であるが、地方の中小規模病院は必要であり、それを削減しようとする国の姿勢には強い反発を覚える。国会議員の皆様方の地方でも当然同様の事態は進行している。医療費削減政策により、身近な入院施設が淘汰されようとしている現実を是非是正していただきたい。そのためにはまずこの理不尽な「特別入院基本料」を廃止し、従前の制度に戻していただきたい。
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