日本は世界一の長寿国家である。(Mさん・医師)
日本は世界一の長寿国家である。しかし健康寿命で考えた時、7歳程短くなることを知っているだろうか?すなわち日本人は健康寿命を過ごした後、寝たきりで平均7年過ごしているのが現状である。この寝たきりの生活が本人にとって幸せであれば言うことはない。例え痴呆があろうともニコニコして歩いて回り、食事を取る。それなら何の問題もない。しかし寝たきり老人の実態はどうか?想像できなければ特別養護老人ホームの訪問をお勧めする。特にその老人達にどのような処置、介護が行なわれているか。
はっきり言って食事がとれず、胃瘻や気管切開が行なわれている寝たきり老人への処置は虐待に他ならない。無論職員に虐待の意志もなく、業務として普通に行なっている処置である。胃瘻とは上腹部に穴を空け、チューブを通し、その管から栄養を注入して生命の維持を図る医療行為であるが、胃瘻チューブは長く使うと内腔に栄養剤が付着してだんだん狭くなり、定期的に交換する必要があるが、できるだけ痛くないように処置しようとも交換のたびに涙を浮かべて嫌がる。気管切開のチューブの交換も定期的に行なう必要がある。むせを想像すれば理解できると思うが、直接気管に刺激を与えることになり、顔を真っ赤にして涙を浮かべ激しく咳き込み非常につらそうである。気管切開のチューブからは日に何回も痰を吸引して窒息を防がなければならず、そのたびに苦痛に顔をゆがめる。胃瘻栄養ではしばしば栄養剤が胃から食道、口へと逆流し、それを誤嚥して肺炎を起こす。そのたびに具合が悪い状態になり苦しむが様々な治療で軽快、そしてまた悪化と苦しむ。私は勤務医として特別養護老人ホームの回診をしていたが、かわいそうにしか見えず、長寿を喜んであげることなどできなかった。
昔は不可逆的に食事がとれなくなればもう寿命であり、諸外国では今でもそのように考えられているが、日本では簡単には死ねない。なぜこの様なことが当たり前になったのだろうか?もちろん医療の進歩はある。しかし一番大きいのは家族がそのような患者の苦しみを目にしなくなったからではないだろうか?病院にしても介護施設にしても家族は患者を丸投げして、処置などを加えられている最中ではない、いい状態の所だけを見ている。そこに死生観など全く存在していない。自分の手を離れていることによって生き続けさせることを要求している。介護行政に問題が生じる程費用も安く抑えられ、時に患者が生きているだけで家族は年金で優雅に過ごせる場合もある。無理矢理生かされているのだ。果たして日本人がこれでいい人生を送っていると言えるのだろうか?
そこで提案だが、入院・入所している寝たきり老人については入所費用を直接施設に支払うことにし、それ以上の年金を支給しないようにしてはどうだろう。在宅で看ている場合にのみ年金を支給するようにすれば、在宅介護が進まないだろうか?
もう一つ不可逆的に経口摂取困難と診断された75歳以上の高齢者については胃瘻と気管切開、中心静脈栄養の費用は造設、管理・維持費すべて全額自由診療とし、それについて混合診療を認める。
日本人の平均余命は短縮することになるだろうが、いい人生の終末を迎えられ、しかも医療費は抑制、若年世代の年金負担を軽減でき、少子化対策にも予算を振り向けられるようになる。
変な後期高齢者医療制度に比べれば、元気な老人はこれまでと変わらない医療が受けられ、日本が確実に若返る。
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