医療議連に寄せられたご意見

医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟

医療議連に寄せられたご意見

医者になって8年目の外科医で、現在大学病院に勤務しております。(Kさん・医師)

私は医者になって8年目の外科医で、現在大学病院に勤務しております。

現在の医療崩壊を非常に憂えており、医師の視点からの医療崩壊の原因、そしてその打開策について検討してみました。

医療崩壊の原因については色々なことが言われていますが、私は最も大きな原因は「医師以外の人達の医療に対する誤解」だと思っています。
医療が不確実なものであることを理解していない人が非常に多いと感じます。また、いつどこにいても安価で高いレベルの医療を受けられることが当然だと考えている人も非常に多いと感じます。これらの誤解が、医師から見れば理不尽な医療訴訟と不可解な裁判結果の増加につながっていると考えられます

次に大きな原因として、医師の劣悪な労働環境が挙げられます。
医師の多くは、労働基準法に違反した過重労働をしています。さらには、労働時間に含まれていない夜間でも電話や呼び出しがあり、当直も実質は夜勤状態であることが多いにも関わらず労働時間に含まれていません。また、医師でなくても可能な雑務も、医療費抑制の影響で医師に押し付けられている状態となっています。

それでも多くの医師は、劣悪な労働環境の中で使命感を持って働いてきましたが、悪化を続ける労働環境の中で、善意の医療行為が訴訟となる虚しさから士気が低下し、精神的にも体力的にも限界に達し、立ち去り型サボタージュ・医療崩壊に至ったと考えています。

この医療崩壊の流れを食い止める策としては、まずは一般国民への啓蒙が喫緊の課題と考えます。広く一般国民に、医療とは不確実なものであること、cost・quality・accessのいずれかを優先するとその他は悪化することを大手マスコミなどから伝えて欲しいと思います。医学が発達したと言っても、まだ分からないことの方が大半で、また患者の個人差も加わるため、非常に不確実性の高い中を、医師はその時点・状況で最善と考えられる診療を行わざるを得ないのです。また診療を行う医師も神でなく人間である以上、勘違いもすればミスもします。また近年、医療への要求が増大していますが(qualityの優先)、医療費抑制政策が続いている以上は(costの優先)、受診制限が掛かる(閉院、休診、たらい回し、診察や手術の長い待ち時間)のは当然のことです(accessの悪化)。このことは警察・司法関係者にも理解してもらい、萎縮医療や訴訟リスクの高い科の衰退を防ぐ方向に向いて欲しいと思います。

次に必要なことは、現在の医療費抑制政策の転換です。医師の劣悪な労働環境を改善するためには医療費の大幅な増大が不可欠です。他国(イギリス・ニュージーランド)の例を他山の石とするべきです。医師の労働環境を改善するためには、時間交代制の導入や専門性を要さない作業の代替が有効と考えられますが、これには医師を含め医療スタッフの増員が必要となります。

現在、第三者機関であるところの医療安全調査委員会(仮称)の検討が行われており、私も概ねその趣旨には賛同しておりますが、「重大な過失」が刑事事件に繋がるという点は再考が必要と考えます。「故意」が犯罪であることは当然ですが、たとえ過失があったとしても善意の医療行為を犯罪とされるようであれば診療は続けられません。

私たち臨床医はそんなにお金が欲しいわけでもなく、多少仕事がきつくても、そこに感謝の気持ちがあればやっていけます。しかし、犯罪者になるリスクを背負ってまでは、愛する家族を守るため、そのような仕事はできないと考えます。

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