医療議連に寄せられたご意見

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ハイリスク妊婦を扱う施設が受け入れ困難となる場合・・・(Aさん・医師)

ハイリスク妊婦を扱う施設が受け入れ困難となる場合、NICU(新生児集中治療室)に余裕がないことによる場合が多いことはよく知られています。新生児医療におけるキャパシティ不足は現場では以前から問題視されており、3年前に我々新生児医療連絡会が全国の主要NICUに対して調査を行った時点で既に母体搬送や新生児搬送を断った経験のある施設が約8割にも達していました。近年の少子化の進行にも関わらず低出生体重児は年々増加しており、その出生率は15年前の約1.5倍にも及んでいます。
しかしそんなに不足しているならもっと受け入れられない患者さんがいても良さそうだと言われるかも知れません。確かに全国のNICUで受け入れが困難であると言っても、ほとんどの患者さんは実際には受け入れられています。それでは何が問題なのでしょうか?
NICUは重症な患者さんを扱う狭義のNICUと、NICUで既に十分な治療が終了し軽症となった患者さんを扱う(ことになっているはずの)回復期病床から構成されます。狭義のNICUでは患者さん3人に対し常時看護師1名の配置が義務づけられており、またその収容期間は出生体重によって定められています。しかし新規の患者さんをNICUに受け入れると、既に入院している患者さんを重症度とは関係なく、回復期病床へ本来の半分程の期間で移動させざるを得ないことが多いと言われています。
一方、回復期病床は一般病床の扱いで成人と同様の看護体制であり、夜勤看護師が1人で何人まで受け持つと言う規則はありません。このため回復期病床における夜勤看護師が1人で受け持つ患者数において、全国の最も手厚い施設と手薄な施設間では受け持ち患者数に数倍の格差があり、また平均でも9-10人と非常に手薄な状態にあります。これを同じ乳児を預かる保育所と比較してみると、保育所では児童福祉法施設最低基準により保育士1人あたりの受け持ち乳児数は3人までと法律によるケアの質が保証されており、回復期病床の手薄さとは極めて対照的です。
このような手薄な環境下ではNICUへの新たな入院を断らざるを得ない事態を生じるだけではなく、更にその歪みが入院中の新生児へのケアの劣化・リスクの上昇として現れています。我々の調査では、看護師が多忙時に新生児の授乳時に抱っこして授乳させることができず、新生児の傍らに哺乳瓶を立てかけて自分で飲ませる、いわゆる「一人飲み」が全国の実に半数以上で行われていることが明らかとなりました。この「一人飲み」は、特に回復期病床における夜勤看護師一人あたりの担当新生児数が多い施設ほど高頻度に行われており、またそのような施設では誤嚥などのトラブルも発生しています。このように回復期病床では健常児を預かる保育所よりも手薄な看護体制の中で、本来であればNICUに収容されて然るべき重症児も含めた、常識では考えられないような人数の赤ちゃん達を一手に引き受けざるを得ず、安全な授乳すらままならない状況にあります。
NICUに対する需要の増加によりNICUの病床数は不足しています。しかしこの問題の根本的解決のためには、単にNICUの病床数を増やすだけでは不十分です。まず医療の中で新生児が新生児として認められ、回復期病床における成人と同様の看護師配置を抜本的に見直し、病院に入院中の新生児であっても保育所と同じような然るべき法的拘束力を持って保護されるような法改正が早急に必要であると考えています。
もの言わぬ小さな命のための、あるべき医療の姿が今、求められているのだと思います。

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