ハイブリッド医療の勧め(Yさん・医師)
ハイブリッド医療の勧め
医師の絶対的不足が地域における産科、小児科医療を崩壊寸前に追い込んでいる。一方、医療技術と医療構造との間に解離が進んだ結果、技術の進歩に追従すべき医療制度が構築されていないことが、医療従事者の疲弊と一部の地域において、医療の質の低下をもたらしている。 これらの諸問題を解決すべく根本的な医療制度を待つまでもなく、本稿では、医師不足に伴う医療の質の低下を防止する対症療法ともいうべきハイブリッド医療について考えてみる。全て同一の手段で均一化するのではなく、異なる手法をハイブリッドとして利用するという発想である。
従来基幹病院における医師の確保には、医局人事に依存する体制があったが、新臨床研修医制度、女性医師の休職等がもたらした人事の停滞は、常勤医以外にもハイブリッドとして、非正規雇用をもって充足する必要性をもたらした。即ち性、正規非正規によるハイブリッドである。育児の必要のある女性医師、開業医等は貴重な労働資源である。現時点において、合法ではないが、派遣社員として開業医等を雇用することも今後検討の余地がある。具体的には、外来業務、内視鏡、超音波、心臓カテーテル等の検査業務に非正規として雇用することで勤務医の労働量を減ずる効果がある。
病棟業務は、現在でも主治医制度を敷く病院が殆どであると考えられるが、主治医が24時間365日の拘束体制を敷くのは非合理的であり、医師の疲弊をもたらしてきた。チーム医療を構築し、夜間休日は病棟当直医に任せる体制は、患者の視点からは、日勤の主治医、夜間休日の当直医が担当となるハイブリッドである。近年専門分化が進むが、例え循環器内科医であっても高齢者の終末期医療を受け持つこと、即ち専門非専門患者を受け持つハイブリッドも病院での医療労働を均等に振り分ける意味がある。
病院での高齢者の社会的入院が問題となってきたが、高齢者の医療においては、病院と在宅のハイブリッドも考慮に入れるべきである。本来病院は、病態を解明し、疾病を治癒させる場所であり、安定期に入った患者を長期滞在させる場所ではないし、病院にとっては尊厳死を希望する人を看取ることも本来の業務ではない。もし、自宅を終の住処として緩和ケアーや尊厳死を望む人々に質の高い終末期在宅医療が供給できれば、病院の医療者の業務は減少するはずである。一方で、死生観を持たずあるいは考えてきたこともない人にとっては、病院を看取られる場所とせざるを得ない状況もあり、病院における滞在期間の短い終末期医療はハイブリッドとして残しておくべきである。
いうまでもなく、夜間休日の軽症患者外来業務は、病院の救急外来のみに依存することなく、開業医もハイブリッドとして考慮する。少なくとも自診療所に通院中の患者からの電話要請で、軽症であると考えられるならば、特別な理由がなければ、夜間休日であっても開業医が自診療所で診療すべきである。通院患者にも良識、遠慮があり、斯様な患者を診る事によって1年中開業医が拘束されることはない。
最後に、医療遂行に当っては、介護従事者から地域住民もハイブリッドとして重要である。隣近所の善意も予期せぬ出来事が多い高齢者を支え、町会などの自治と医療従事者が協力することにより、予防医学を浸透させ、軽症患者の病院救急外来への集中を防止する啓発にもなろう。
その他にも医療従事者の負担を減らすハイブリッド医療は少なくはないと考えられ、以上述べてきたことは、あくまでも対症療法に過ぎないが、これまで日本の医療を支えてきた体制、制度のなかで、改革とは言える程の事ではないが、足下の解決策として考慮すべきものと考えられる。
|