医療議連に寄せられたご意見

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医療議連に寄せられたご意見

現在の周産期医療が抱える問題点と対策について(Tさん・医師)

わが国の周産期医療は世界に誇るべき成績をあげている。しかし、最近では産科・小児科の医師が不足し、さらに妊娠出産を取り巻く社会的背景の変化から、今後の適切な整備がなされなければ、新生児の死亡や脳性麻痺などの後遺症が大幅に上昇する可能性が高い。そこで、周産期の整備事業に関係してきた経験から、現在の周産期医療が抱える問題点をあげ対策について考えてみたい。
 わが国の平均寿命が世界一となったのは出生前後の死産や新生児死亡(周産期死亡)が減少したことの貢献が大きい。この様な予後の改善は、昭和30年前後の施設分娩の増加による分娩の安全性の確保、昭和40年代のハイリスク妊娠・ハイリスク新生児に対する異常の早期発見・早期治療の開始、昭和50年以降の新生児集中治療(NICU)の普及などにより達成された。妊産婦や出生した新生児の安全性が確保された結果、医学的な安全性のみでなく出産の快適性も同時に求められるようになったのが現在である。
妊娠や分娩、出生した新生児には今でも大きな危険が潜んでおり、現在の好成績は周産期医療関係者のたゆまぬ努力の結果得られているものである。しかし、この様な状況を社会は認識せず、安全であるのが当然であり、異常が生じた場合には医療側の過誤であるとして責任を追求するようになってきた。このため高い医療水準を要求され、増員が認められない中で不十分な人数のまま必死に努力してきた医師が、この様な状況に耐えられなくなり他領域に移ったり、こうした状態を見た若手医師が周産期を敬遠するようになった結果が現在の産科小児科の医師不足の原因である。医師不足に加え施設の維持運営が可能なだけの医療費が支払われないことから分娩を取り扱う施設も減少してしまった。
 産科救急患者の入院拒否が社会的な問題になっているが、その原因の9割はNICUが満床のためである。すなわち生まれてくる子どものケア出来ないため妊婦の受け入れも断らざるを得ないのである。センター施設がNICU病床の不足から合併症を生じた妊婦を受け入れてくれないため、いつ生じるかわからない異常に対応できずリスクの少ない分娩の取扱いも中止する産科施設が増えているのである。
現状の解決には周産期医療施設と医師の確保が重要であり、医師としては産科医と同時に新生児医療を担当する医師の確保が必須である。NICUのケアの大部分は小児科医が担当しているが、一般小児科とは病棟も診療内容も別であり兼ねることは困難である。しかし、この様な科(新生児科)は診療科として認められておらず、産科、小児科(病院小児救急)の医師確保対策の中にも入っていない。この様な状況下ではNICUを中心とする新生児科の医師(新生児科医)の確保は不可能であり医療水準の低下が懸念される。
このため、新生児科を正式な診療科として認め、産科医とともに新生児科医を確保するための対策が必要である。産科医や新生児科医の供給が十分になる迄は、施設の集約化で対応することになるが、そのためには医療圏の広域化と各自治体が必要な経費を分担することが必要である。
集中化と広域化は、住民に対する宿泊施設の配慮などがあれば十分に実現可能であることは、東京都の島嶼での周産期・新生児医療ですでに経験されていることである。

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