医療議連に寄せられたご意見

医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟

医療議連に寄せられたご意見

「安心・安全な医療」は、医療者の立場からも切実なものとなっている。(Tさん・医師)

「安心・安全な医療」は、(I)患者の立場からだけでなく、(II)医療者の立場からも切実なものとなっている。
(I)患者にとっての「安心・安全」は、(1)救急受け入れ体制の整備(特に産科と小児科)(2)インフォームドコンセント(医療内容の十分な説明を受けたうえでの選択)(3)医療事故を減らす対策などであろう。
(II)医療者にとっての「安心・安全」は、(1)労働基準法違反の超長時間勤務からの解放(2)医師法21条からの解放(3)医療事故訴訟からの解放に尽きる。
 患者からの視点と医療者からの視点をすりあわせてみると、真の原因は、「医療は安全確実で100%の治癒率を提供する24時間のサービス」という過大な期待であることが明らかになってくる。残念ながらそのような期待にこたえる医療は未だかつて、世界のどこにも存在しない。そのような「夢の医療」を基準にして、患者の予期せぬ死亡をすべて届け出させ、過失の有無を裁こうとしているのが昨今の警察検察の姿勢であり、国際的にも前代未聞のことである。司法の「業務上過失罪」は、過失を犯罪とする、国際的にも少数派の法概念であるが、特に、不確実で不完全な営みである医療には、全くなじまない。
患者も司法界もメディアも、医療事故が決してゼロにはならないこと、医療が、危険で不確実なものであることを、もっと理解してほしい。少数派である医療者をバッシングしても、どうにもなる問題ではない。生老病死という不条理を受容できず、怒りを医療に向けても、何の解決にもならない。医療者は、「死亡」という結果が「届け出」や「裁き」に直結するのなら、死亡率の高い医療や死亡した場合に納得いかないと訴訟を起こされる可能性の高い不条理な医療分野(救急・産科・小児科)を避けるしかない。
かくして、救急・産科・小児科から勤務医が撤退を開始し、危機的状況になってきているのが現在進行中の医療崩壊なのであるが、その真因は、24時間いつでもどこでも完璧な医療を求める過大な期待と、うまくいかなかった場合、原因を疾病そのものでなく医療過誤に求める医療訴訟の増大、また、要求される医療の水準をあまりに高く設定した医療訴訟の判例の数々にあることを、患者や司法界やメディアはもっと理解してほしい。
医療崩壊を食い止める唯一の方法は、(1)医療資源は限られた公共資源であることを社会が認識し抑制的に利用すること、(2)生老病死という不条理に対して患者医療者ともに謙虚になり医療を過大評価しないこと、(3)医療が完璧であることはありえないのであるから善意で全力を尽くした医療には業務上過失致死罪を適用しないこと、である。医療は、死すべき運命にある生命体を、エントロピーの法則に逆らって生かそうとする、不確実で困難に満ちた業なのであるから。
今まで、少ない数の医師が、交代制勤務もなく過重労働に耐えながら低い報酬でがんばってきたのは、患者や社会からの尊敬と感謝にやりがいを感じていたからである。いくらがんばっても、結果が悪ければ刑事的民事的に糾弾されるのみで、診療報酬制度は悪化するばかりでは、倫理感や責任感にも限界がある。社会全体が、医療資源をどう認識し構築すべきか、今一度考え直してほしい。さもないと、死亡率の高い、訴訟される可能性の高い分野からの医師の撤退に歯止めをかけることは不可能である。
最後に、医療紛争の解決策として提案されている医療事故調査委員会は、審議内容を訴訟に利用することを容認しているので、かえって訴訟を奨励することになりかねず、解決に逆行している危険な制度であることは、声を大にして訴えたい。

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